Friday 29 March 2013

ネコのいる Anchovy Studio オープン!


ダディが朝からスタジオの準備をしている。

オープニングの今日は誰を撮るのだろう、と思っていたら、このまえ来たすみちゃんがやってきた。彼女のCDジャケットの撮影のようだ。すみちゃんはシンガーだったのだ。いろいろな人が来て賑やかになった。皆が「ピノ、ピノ」と言って、ボクをかまってくれる。でも、ボクは本当はもうそろそろ昼寝をしたいんだ。今日は睡眠不足になりそうだなあ。

        ネコのいるAnchovy Studio オープン!

階段の上から撮影風景を眺めていたのだが、どうにもこうにも眠くてたまらない。しかしどうしたことか、見下ろす限り、いつもスタジオの窓際に置いてあったボクのベッドが見当たらない。どこにいったのだろうかと、仕方なくしょぼしょぼした眼で下りていった。まず、ポーズをとっているすみちゃんの横を、ボクはすまーして、それとなくさり気なく探してみた。それから、テーブルの下、バスルーム、あちこちと。最後は皆の荷物をかき分け、匂いを頼りにやっとソファーの下にベッドを見つけた。マミーの仕業に違いないとは思ったのだが、 今日は苦情を言うすべもなく、ボクはざわめきの中で眠りに落ちていった。

一眠りして目覚めたら、タイミング良く、ざわざわと皆が夕食から戻ってきた。あれれ、ボクの好きなサクヤちゃんもいる。いつどこから来たのだろうか。 彼女はボクを抱きよせ、何回も撫でてくれる。今日もお酒の匂いがするけれど、やっぱり大好きだ。

今日はなかなかいい一日だった。

Saturday 23 March 2013

ついで




 マミーがお寺さんから薄い小冊子をもらって帰ってきた。お彼岸でお墓参りに行ってきたのだ。帰ってきてしばらくしてから、マミーはその表紙をめくり、1ページ目を読んだ後、ボクを見て、なぜかモナリザの微笑を浮かべた。


「ついで」という題に惹かれて、読んでみたくなったようだ。それは、食べるのがとても遅い妹をお母さんがひどく叱り、なんにも悪いことをしていないお兄ちゃんにもひびいて、「こらあ」と、ついでにおこられてしまう、という、小学一年生の男の子が書いた短い作文で、詩の形体になっているという。

マミーは、時々、自分勝手なダディに腹を立て、怒る。そして、ボクにも伝染して、「ピノ、何回言ったら分かるの!!」と、ついでに怒る。ボクはとんだとばっちりを受けるのだ。そんな日常風景をマミーはオーバーラップさせたのだろう。


人は自分の好みと価値観によって、ものを選んだり判断したりする。それゆえ、他の人に備わった個性を認められず、自己を主張し、相手を否定してしまうのだ。猫だって同じだと思う。だからケンカが起きるのだ。

お彼岸にこの純真な男の子の「ついで」を読んで、マミーは何やらもぐもぐと言っている。
「人にはそれぞれ違った個性があるのだから、自分の価値観に捉われないで、他の人の価値観も受け入れて認め合い、お互いに相手の身になることが大切なのよねえ……」
と、眠りに落ちてゆくボクを、ついでに優しく撫でながら……。

Saturday 16 March 2013

竹馬の友の匂い



 以前確かにどこかで会ったことがあるふたり、なぜだかとても懐かしさを感じるふたりが我が家にやってきた。においを嗅いでみると…「あっ、アルフィーの匂いだ!」。このふたりはロンドンの親友・アルフィーのパパとママだったのです。


「アルフィーのパパとママ、お久しぶりです。また会えて嬉しいです。ようこそ我が家に。アルフィーはどこですか。今日は一緒じゃないんですか!?」
「ごめん、アルフィーはロンドンで留守番なんだ」
「そうですか。ニャン……」


そういえば、ふたりが出かけるときは、アルフィーはいつもボクの家に連れて来られていたなあ。でも、我が家はもう東京に引っ越してきてしまったから、彼は今はどこの家にあずけられているのだろうか、ちょっと心配になってきた。体は大きいが、パパとママが恋しくて、いつも夜鳴きしていたからなあ。

「一緒に遊ぼうよ。アルフィー、こっちこっち! う〜ん、とっても気持ちいいよ。君の毛繕いはピカ一だね。ボクもしてあげる…」

嗅覚にしみ込んでいた、竹馬の友との思い出が、やけに懐かしい春の昼下がりである。

Sunday 10 March 2013

カレンダーの中の二人のボク




もう三月だというのに、マミーは今頃になって今年のカレンダーを飾ろうとしている。どんなカレンダーなのかちょっと覗いてみると…、あれっ、ボクに似ているなあ、ボクだ! でも… いつ、どうして、どうやって、ボクがカレンダーの中に入ってしまったのだろうか、不思議でならない。

お気に入りのいつものペットフードショップ「ファミーユ」さんがサービスで作ってくれたそうだ。しかし最初、店長さんは、本まで発行したボクだから、小さなフォトカレンダーの一枚なんぞは要らないだろうと思ったようだ。でもまあ、一応マミーに聞いてみたところ、「お願いします」と言ったものだから、店長さんはちょっと驚いていた、とマミーは嬉しそうに話す。

その後日、ダディの撮った写真をマミーがショップに持参して、本日出来上がりとなった。 すばらしい! 一番喜んでいるのは無論マミーである。このボクは、まだ不思議の糸がもう一本からんでほどけない。それは、カレンダーの中にボクが二人いるのだ。本物のボクとイルージョンのボク。あそこには鏡もガラスもなかったはず。これは一体どういうことなの!?


「さあ、どこに飾ろうかしら。もう三月ねえ…」と言いながら、マミーは気まぐれな春風のようにどこかに姿をくらました。ダディに聞いてみようと思う、魔法に目をくらまされたボクである。

Friday 8 March 2013

カンカン踏み切りとスカイツリーとボク




春が来た。春が来た。さあ、出かけよう!
二度目の、いや正確にいうと三度目の外出だ。二度目は、また病院だった。あれは…あの姪っ子と母親が来たときに、ボクの両足裏の一部分が脱毛していることに気づき、大騒動となったのだ。階段や床を駆け回るので、すれてしまっただけなのに。この親子ときたら、猫のこととなったら、風が吹いたにも、くしゃみをしたにも、大騒ぎするのだから、たまったものじゃない。

今日は正真正銘の散歩だ。とはいっても、ショルダーバッグ入りだが。実は楽しみにしていたスカイツリーが家からは見えないので、少し見晴らしのいい所まで連れて行ってくれる、とマミーが提案した。何か魂胆めいてはいるけれど。

三人で線路沿いの散歩道をゆく。初めて聞く踏切のカンカン音が新鮮に響く。「右手前方に見えますのはカンカン踏み切りでございます」と、ガイドの大声と共に電車が通過した。ああ、シネマの世界だ。いや、ボクは確かに下町にいる。これは現実なのだ。

マミーが話し始めた。
「昔ね、私が小さかった頃、何度か飛び込み自殺があったのよ、あの踏切で…」
ボクはフッと想像の世界に…
カンカン鳴り始めたが、右を見ても左を見ても電車はまだ見えない。よし行ってしまえ、と線路を跨いだつもりだったが、昔は下駄というものを履いていて、迂闊にもその下駄が線路に挟まってしまった。さっさと脱いで逃げればいいのだけれど、あいにくワンペアしか持っていないものだから、地道に抜こうとしているうちに…あっ電車だ!
「…昔はみんな貧しくて、大方は生活を苦にしてね。今では踏切の遮断機が改良されたけれどねえ」と、マミーは話し終えた。
どうやらやはり下駄の所為ではないらしい。カンカン…また電車が来るようだ。何となくエレジーだなあ、…カンカンカンカン……。

「ニャン、ニャン、ダディ! スカイツリーが見えたよ。Wow! 本物だ

「もっとよく見えるところにご案内しま〜す」
と、見慣れた年増ガイドが率先する。

あれっ、スカイツリーに何かが!? 巨大蜘蛛か、それともスパイダーマンが窓ふきでもしているのかな? このまえテレビニュースで見た、アメリカの高層ビルのように。頼んでもいないのに、ガイドさんは「スカイツリーとボク」のスナップショット熱中モードに入っている。けれど、ここからではスパイダーは人間には見えないのかもしれないなあ。

そろそろダディがボクを重荷に感じてきているようだ。踏切は避けて、帰りは違う道を通りたいなあ。
「そろそろ戻ろうか。帰りは他の道を通ろう」
と、ダディの思慮分別のある呟きに、ボクはニタッと笑って答えた。ニャン!


Sunday 3 March 2013

ひなまつり



日本に来てボクにとって、またまたはじめての something”
今日は、“はじめてのひなまつり” です。

日本には、様々な行事やお祭りがあるものだ。冬を経験したが、これから春にも、そして夏、秋にもいろいろあるのだろうなあ。

今日は女の子のためのお祭りで、女の子であることを祝うという。なんてユニークなのだろうか。まてよ、ということは、男の子のお祭りもあるはずだ。絶対にある。よし、ならば、一応ひな祭りを祝福してあげようではないか。

マミーが、自分のためかどうかは知らないが(中年になっても、女の子のカテゴリーに勝手に留まっているようだ)、ひなあられを買ってきた。でもそのおかげで、ひなあられなる可愛い存在を知った。ボクは男の子だけれど、ちょっと賞味させてもらって、何だかあま〜いふわふわの桃色気分に満ちている。

四月には桜がすばらしいと聞いているし、日本の春には「桃色」が良く似合う(念のため、ピンク(カタカナ)ではないと付け加えておこう)。今度、可愛いニャン子を見かけたら、桃ちゃんと呼ぼうと、桃の節句に思う。