Saturday 25 May 2013

シッポが見えてるよ!




先週、駐車場ゲート完成の数日前に、実はこんなハプニングがあったのです。

あれっ、庭に出る二重のドアが開いている。ダディが門扉作りのために、出たり入ったりしているので、案の定、締め忘れたのだろう。ダディの不注意な性格のおかげで、とうとうエスケープの時が来た。近々きっと、早ければ今週あたりにでも、このチャンスがやってくるとボクは確信していたのだ。

ああ、庭だ、外だ、ボクの世界だ! だが、戸口のところでゆっくりはしていられない。すぐに行き先を決めなければ見つかってしまう。オッと、右へ行けば、作業に専念しているダディがいる。ならば、左へ行こう。

はて、ここからどうするか? 左へ廻れば、家の玄関に出られるはず。眼前には囲いがあり、その向こうに家が立ちはだかっている。こんな囲いを飛び越えるのは容易いことだが…、右を見ると、境界線に塀はなく、何やら面白そうな石がいろいろ積んである。よし、探検してみよう。

この家もどうやら石屋だったようだ。不用になったいくつもの石灯籠が行き先もなく、雑草の上にゴロゴロしている。「ピノ、ピノ…」遠くのほうでボクを呼ぶマミーの声が聞こえる。ひとまず、灯籠の後ろに隠れて遊んでいよう。

どのくらいの時がたったのだろうか、見上げると、そこにダディがいた。すかさず、えり首をグイッとつかまれ、ひっぱり上げられた。
「シッポが見えてたよ」
上手に隠れたつもりだったのに…。

「性格というのはなかなか直らないものだから、そのうちまた、チャンスがあるね、ダディ、ニャ〜ン!」と、ぶら下げられたまま、ダディに不注意を促すボクである。

ああ、楽しかった。マミーが心配しているからそろそろ帰ろう。

Saturday 18 May 2013

駐車場ゲートは何のため?





ボクの家は一風変わった建物なので、行き交う人々が立ち止まる。窓辺に座っているボクとバチバチ目が合うけれども、こっちはネコ目なので軽視されてしまう。ボクだってれっきとした、この家の住猫なのになあ。

しかし、こんな悩みとももうお別れだ。今週とうとう、駐車場ゲートが完成。バリアができたのだ。その記念として、「ダディ、本当にありがとう!」と、みんなで笑顔の乾杯をした。

しかし…、不用心だし、目隠しのためにゲートを建てて、ボクもこれからは誰にも邪魔されずにうたた寝ができるだろう、と思いきや、そのゲートも創作的で目を惹くものだから、却って、足を止める人が増えてしまった。

でもまあ、目新しい今だけのことだろう。そのうち、人目を気にせず、ネコらしく窓辺でのんびり寝られるようになると思う。でもでも、ダディに一つ質問があるよ。「いつ車を買うのさ?」

いっぽう、ダディとマミーは、これで、我が家の庭で、イギリスの文化・夏の風物詩ともいえるバーベキューパーティーができる、と喜んでいる。ああ、バーベキューの匂いが蘇ってきた。ダディがボクにはマリネートしない、味もそっけもないチキンを焼いてくれると思うけれど、みんなが楽しんでいる庭には招待してもらえそうもないな。

みんな、やぶっ蚊にさされて、嘆くがいいさ。

Sunday 12 May 2013

母の日




イギリスにも母の日があるのだが、やっかいなことに、毎年、日にちが異なる。大概3月だが4月になるときさえある。その日は四旬節(キ教)の第四日曜日なので、ボクには全く分からず、よって、何もマミーにあげたことがない。

日本の母の日は5月の第二日曜だそうだから、とても分かりやすい。今日が母の日だ。だけれども、ボクはマミーに何があげられるだろうか? モノは無理なので、やはり行為になるだろう。キスしてあげてもいいなあ。抱きついてあまえてあげてもいい。ひざの上に座ってあげるのもいいだろう。


でも、それじゃ、いつもとちっとも変わらないではないか。いやいやそうではない。いつもはボクがしたくてしているけれど、今日はマミーのためにするのだから。プレゼントになる。好意をあげることになるのだ。

マミー自身は、お母さん(ボクの歯のないおばあちゃん)に何をあげたかというと、ブルー系のブラウスと上着のアンサンブルをプレゼントしたそうだ。マミーは長年海外にいたので、何年も母の日にプレゼントをしたことがない。それで今年は、「母のいる幸せ」「母にあげられる喜び」を感じている。実はモノは、「もらう」より「あげる」ほうがずっと嬉しくて、あげられる喜び、自分が人に何かしてあげられる、という喜びを感じることができる、とマミーは言う。

老人ホームに年老いた母を訪ね、プレゼントのブラウスに即着替えさせて、マミーの姉さん夫婦と一緒に車で、叔父さん(母の実弟)の入院している病院に向かったそうだ。車中では、「ホームの食事はまずくてね。おそばをみじん切りにして出すもんだから、お箸で食べるのが大変でね、苦労するよ」と、おばあちゃんの真剣な笑い話は尽きなかったそうだ。病院では、90代の姉と80代の弟の何年振りの再会だったのだろうか。何よりのプレゼントだった、とマミーは25年分の母の日の喜びをかみしめている。

ボクは今夜は夜回りしないで、早めにマミーのベッドに潜り込んであげようと決めた。「ありがとうマミー、ニャン!」



Saturday 4 May 2013

DIY




ゴールデンウィークの真っただ中、庭兼駐車場の木製塀作りが開始された。
枠組みの建材は遠くから取り寄せ、工具も全部買いそろえて、いよいよダディのDIYが始まった。まず近くの店から届いた数十本の竹を切り分け、門柱の深い穴を堀り、重い砂、セメント類をホームセンターで購入してきた。もうすでに重労働だろう。

ロンドンで培われたダディの造作力は抜群で、何だって自分で作れるし、センスも良く、かなり満足度の高いものができあがる。職人さんに頼まずにすむので、マミーはいつも心の中で感謝している、とボクは推測する。でも、小物の場合は、「買ったほうが安かったわ」と、苦笑するときもある。

今回のDIYは、大きな門扉のような、開閉式の塀で、今日は門柱を建てるので、かなりの大仕事だ。後で、助っ人が来るらしい。ネコの手を貸しても、大河の一滴だろうから、いや、むしろ「邪魔邪魔!と言われるのが落ちだから、ボクはこのまま隅でおとなしく見物していよう。いつ完成するかは分からないけれど、これでもう、ノラたちもやすやすとは、ボクの庭に侵入できなくなるだろう。夜回りもかなり楽になることと思う。

「ダディ、大変そうだけど、ケガをしないように、DIY頑張ってください」
「ああ、マミー、机にばかり向かってないで、ダディーにお茶でもいれてあげてよ、お茶菓子付きでね」

お菓子といえば、明日は五月五日、こどもの日だ。
ボクも何か美味しいものがもらえるかも? ボクにできるDIY は……。