柿の実がだいぶ大きくなってきたなあ。あれっ、あれは何だろう? と思っていたら、
「あっ、車のアンテナにトンボがとまっているよ、ピノ」
と、打ち合わせに来ていたHさんが教えてくれた。
初めて見るトンボという虫 — 透き通る美しい羽、縞模様の長い尾っぽ
か細い足でアンテナの下側に、どうして何分もとまっていられるのだろうか。ボクだったら、木に一瞬しかぶらさがっていられないのにな、と思った。「あれは、しおからトンボかしら?」マミーがそう呟くと、ボクは何トンボでもいいではないかと思ったのだけれど、彼は早速検索して、「しおからトンボのメスみたい」と言う。その返答にマミーがにっこり笑った。
「アイスクリームをあげるね、ピノ」
と、マミーが手のひらをボクの鼻先に近づけた。
ボクは初めてあこがれのアイスクリームをなめた。日本のあまりの暑さに、一口だけ、オファーしてくれたのだ。
ひとなめしたら、冷たかった。
もうひとなめしたら、あまかった。
もうひとなめしようとしたら、手のひらが見えた。
ああ、おいしかった。
ああ、おいしかった。
一日に、ふたつも小さな発見をしたボクだった。