Sunday, 30 June 2013

茅の輪くぐり




ちょっとそこの神社まで行ってくる、と言ってマミーが出て行った。
この前お祭りがあって、外出禁止のボクの窓辺までお囃子が聞こえてきたのだが、今日は静かだが今度は一体何事だろう。日本にはいろいろな神事があるようだ。

しばらくすると、「茅の輪くぐりをしてきたのよ」と、さわやかな面持ちで戻ってきた。ボクがきょとんとしていると、マミー曰く、「茅の輪(ちのわ)くぐり」とは、茅草で作られた直径3メートルの大きな輪を、左、右、左、と3回くぐってまわると、この半年間の罪けがれ、疫病がはらわれ、心身が清らかになるという昔から伝わるお祈りだそうだ。

しかし、お祈りなので、ただ回ればいいのではなく、何やら難しい古歌を唱えながらくぐるようで、もしもボクが実行できるとしても、ただ1回ピョンとまたいで、ニャンと唱え、左でも右でも好きな方に一回まわっておしまい、ってことになるのだろうなと思った。その古歌とは、

水無月の夏越しの祓(なごしのはらえ)する人は千歳の命延ぶといふなり

前半は「夏越の祓」六月三十日執行だが、後半の半年間の罪けがれはどうなるのだろうかと思ったら、年末にも茅の輪をくぐる「年越の祓」があるらしい。やれやれ。

Saturday, 22 June 2013

ふたつの茄子



いつものように窓辺から庭を眺めると、いつも細い木にぶらさがっていた、ふたつの茄子がない。少しずつ育っていくのを毎日観察し、この長雨でぐーんと大きくなっているだろうと思っていたのだ。どうしたのだろうか。猫たちが食べるはずもなし。

渋い紫色のつやつやしたふたつの茄子をキッチンに発見した。どうやら初めての収穫をダディとマミーが今晩試食するようだ。ボクは得意の忍び足で近づいて、においを嗅いでみたが、無臭。いい香りでもすれば、この湿った梅雨時、ずいぶん心地よいのだろうが。香りすらないのでは、ボクには何の得もなし。しかしこうして側で見てみると、なかなか面白いシェイプをしているなあ。

次のふたつの茄子が実をつけるまで、茄子鑑賞は当分なさそうだ。あくびがでそうだなあ。でもこの退屈な空間はこれからは雑草で賑わうのかなと思った。

Saturday, 15 June 2013

デデデデデっか〜い!



デデデデデっか〜い!
「こんなにでっかいパンツがあるのか!!」
「小錦が履くサイズねえ」
と、マミーもボクもびっくり仰天している。
これなら、どんなに太鼓腹になっても、ルースフィットだろう。

ロケからダディがこのパンツを持ち帰ったのだ。何と四枚も!
ロケ先はタイ。その他に竹細工もいろいろと買ってきた。
「こうやって、ウエストのところで巻いて履くんだよ」
と言って、早速ジーンズからこのデカパンに履き替えた。
「帰ってきたばかりだけど、今晩出かけるだ。このパンツで電車に乗っても大丈夫かなあ?」
と、自慢が不安に入れ代わった。
ボクにしてみれば、好きにしたら、というところだけれど…。

ところで、ボクにはお土産はないの!?

Saturday, 8 June 2013

とんだ誕生日




6月6日、8歳になった。そして今年は日本で誕生日を迎えた。
Happy Birthday, Pinot! ああ、もう8年、あっという間ねえ…」
と、子猫のときの写真を見ながらマミーがボクを撫でる。

ボクにしてみれば、誕生日だからといって、おやつの量が普段より少々多めなだけで、サプライズもなく、別段いつもと変わりはないのだが…。

塀の下をくぐって、テールランプがやってきた。誕生日のお祝いに来たはずもなく、一体何しに来たのだろうかと、ボクは気がきではなかった。するとピョンと柿の木に飛び乗った。柿の実はまだまだなのに、小鳥でもいるのかな? と思ったら、斜め上向きの幹で爪研ぎを始めたのだ。なかなかいい所を見つけたものだ。その後、木から飛び降り、すぐさま奥に視線を向けた。

そこまで! これ以上ボクの庭で悪さは許さない。ボクのシッポはどんどん膨らみリスのシッポとなり、耳はイカ耳になった。ボクは行ったり来たり、階段を一気にジャンプして上に行ったり下に行ったり、必死に駆け回った。おやつを準備しているマミーをちらちら見ながら…。

ああ、飛んだハッピーバースデーだった。

でも、嬉しいことに、
“Dear Pinot, Happy Birthday!”
と、ロケに出ているダディから、その夜遅くバースデーメールが届いた。
やっぱりダディはカッコいい!

Saturday, 1 June 2013

お尻が赤いよ!




日本に来て、三度目の病院である。
一回目とニ回目は、ちょっとしたご挨拶と足の裏の脱毛対策だったが、今回は久々に持病が出た。昨日まで、越してきて以来何ともなかったので、ボク自身、ダディーもマミーも、日本に来て住宅環境と気候の変化で治ってしまったのでは、と思っていたのだ。しかし、
「ピノ、お尻が赤いよ!」
と、大騒ぎになり、今朝、玄関先にバスケットが準備されていた。

とうとうお尻が腫れて、日本で初めての肛門腺の絞り出し。病院の待合室で忘れていた地獄が蘇ってきた。運良くあまり混んでいなかったので、さほど待たされずに治療室に入った。だが、二人に押さえつけられ、想像通りボクはもうずっと悲鳴ともつかぬうめき声をあげっぱなしだった。でも、お尻にもうひとつ穴を開けずにすんだので、注射も一週間の飲み薬も免れ、ありがたや、ありがたや。

今日だけ一日おとなしくしていれば、明日からまた走り回れることだろう。
先生、いきなりお尻を向けてごめんなさい、と頭を下げるボクだった。