Saturday 2 February 2013

下町小町




ロンドンから東京の下町に引っ越してきて、かれこれ2〜3ヶ月になるだろうか。早いものだ。

今までにウチの庭をうろついている奴は…デカ、ノラ、ブチ、そして、シッポをつめたのか知らん、シッポがまあるいテールランプ。女の子たちは、というと…、皆そこそこ健康そうではあるが、顔がすこぶるまずい。無茶苦茶不器量で、長生きしそうだ。まず、いくら猫でもペチャ鼻のハナ子、ミミズのように細目のミミズちゃん、カボチャ顔のかぼちゃん、それに、クシャミ顔のシャーミン。名前がないのは気の毒だから、みんなボクが勝手につけてやった。美しい、可愛い、などのポジティヴイメージの形容詞とは、いささかも縁のない、できるだけ交際したくないブサにゃん子たちだ。

ボクは文字はちょっと見ただけで、すぐに眠くなってしまうので、小説なんぞは読んだことがないのだが、マミーがこんなことを言っていた。
「『我が輩は猫である』に出てくる、御師匠さんのとこの三毛子のような、鈴をちゃらんちゃらんと上品に鳴らして歩く、美しい猫はいないのかしら。このあたりの下町じゃ、小町娘は見かけないわねえ」

下町といってもいささか広い。他の町には、3丁目には、下町小町がいるのだろうか? 本のタイトルだけは聞いたことがあるが、名前から察しても美しい三毛子さんは、どこらへんに住んでいたのだろう。山の手かもしれないなあ。美人薄命、きっと早死にしたのだろう。
「あれは、どのへんだったかしら、忘れたわ」
と、無闇な呟き。

ボクは今日も窓辺で、下町小町が通りがかりはしないだろうか、鈴の音が聞こえてきはしないだろうかと…。想いは夢の中に… ちゃらん、ちゃらん ……。


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