Friday 5 April 2013

おじいちゃんの優しい石




春の到来にせき立てられて、いよいよ庭造りが開始された。限られたスペースに、おじいちゃんの残した石をふんだんに配置した石庭と、草花の庭を共存させようと考えて、ダディとマミーは、ああしよう、こうしよう、と試行錯誤している。


石屋だったおじいちゃんの仕事場兼裏庭には、石灯籠やら手水鉢やら、その他様々な石が折り重なっていたそうだ。ボクはマミーの『思い出ぼろぼろ』に耳を傾けた。

私、子供の頃ね、裏庭で遊んでいて、石をヒョイと跨いだの。だけど運悪く、それは大切なお地蔵さまだったの。それでびっくりして、「ごめんなさい! お父さん、どうしよう!?  わたしバチがあたる」と、無垢な私は泣き声になって。昔は小さな子供が亡くなると、その子の供養のために、お地蔵さまをつくったのね。そう、そしたら、おじいちゃん、まあその頃は若い力持ちのお父さんだったのだけれど、こう言ったわ。
「大丈夫、心配しなくてもいいよ。まだお坊さんがご祈祷していないから、それはお地蔵さまの顔をしたただの石だからね。それより、危ないから向こうで遊んで」
その優しい言葉に、涙が溢れて…。ちらっと見たお地蔵さまの顔がほんとうに優しかった。

思い出のあるの、ないの、大きいの、長いの、四角いの、どうころがしても重い石たちをどうやって配置するのか、かなり大変そうだ。 ダディがテーブルにパーフェクトサイズのを見つけて、ほどよい所に敷いた。ところが、窓越しにボクと一緒に見ていたマミーが「低くてちょっと変ねえ、下に四角いのを入れて高くしたら」と安易に発言。ああ、やっと敷いた石のテーブルを、また動かすのかと、ダディは石を抱えずに、頭を抱えている。

花やハーブの香りに癒されて、おじいちゃんの優しい石の上で昼寝したり、遊んだり、時にはジャンプだって…。ああ、もうすぐ、もうすぐだ、と勝手に想いを馳せるボクである。


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